タイイングのヒント

フライを作る際、何に似せようとするかでフライはまったく別のものになります。
例えばパターンブックに載っているフライをそのまま真似るとします。ボディは何色のどんな素材を使って、ハックルは何色・・と書かれているままに作ればパターンブックに近いフライが出来上がります。
この方法は、初めてフライを作るとき、ハックルの広がり方やボディの作り方など、方法とテクニックを学ぶには都合が良い方法ですが、誰かが虫を真似たものを真似ることになるので、自分の創造力はほとんど発揮できません。

素材の使い方と特性が少し分かったら、あとは魚の気持ちになって自分で色や形を決めてみてください。出来上がったフライが良いか悪いかは魚が判断してくれます。

魚はドライフライをどう見ている?

魚になったことがないので人間の目を通しての話ですが、魚はどんなふうにフライを見ているのでしょうか?

①空を背景にしたフライ

魚が水面のドライフライを見るとき、普通は空を背景にして見ます。実際に空を背景にするとフライはどんな感じになるのでしょうか。




簡単に作れるという理由から、次項で実際にタイイングするドライフライ(CDCカディス)を使って試してみます。


フックは#14のドライフライ用、ボディもウイングもヘッドもCDC(鴨のお尻の毛)を使用しました。







同じ形のフライを3色作りました。左からクリーム色、ナチュラル、黒です。
色の違いが魚からどんなふうに見えるか考えてみます。










人間が普段見慣れている空から光が当たった状態で、川原の小砂利を背景に3つのフライを見てみます。
この状況では左のクリーム色が一番目立ち、次は真ん中のナチュラル、右の黒が一番目立ちません。








今度は3本のフライをうす曇りの空にかざしてみます。
左がクリーム、中央がナチュラル、右が黒です。
上の写真と比べると目立つ色は逆になり、黒が一番目立っています。


曇りだけでなく、日が出る前の早朝や日が落ちてからなど、太陽が直接当たっていないケースではこれに近い状況になると思います。





それでは青空の下ではどうでしょうか。
フライに直接太陽の光が当たると少し雰囲気が違ってきます。
水面に張り付いている部分がどう見えるか別にすると、空中にある部分は明るい色のほうが目立ち、普段人間が見慣れているものに近い色に見えます。


水面に張り付く部分、空中にある部分がどう見えるかはわかりませんが、周囲の明るさによって見え方が変わるのはフライを選ぶひとつのヒントになりそうです。






実際の釣り場で良くありそうなケースとして、天気の良い日の木陰ではどうでしょうか。


枝がどれぐらい光を通すかにもよりますが、この状況ではクリーム色が一番目立ち、葉の緑と枝の薄茶の中ではナチュラルカラーは溶け込んでしまいました。






②水に浮かべたフライ

今度は透明な容器に水を張ってフライを浮かべ、下から覗いてみます。
実際の釣り場では波や風があり、さらにドライフライの項で説明した「フィッシュウインドウ」ということもありますので、これとは違う見え方になるかもしれませんが、フライを作るときのひとつのヒントにはなると思います。



晴天の日陰の水面にフライを浮かべた状態です。上の空気中の写真と同じように黒が一番目立ちます。

CDCは一本一本に細かい毛が密生しているので、アメンボのようにうまく水面に乗るので、水面の凹みはあまり目立ちません。







上の状態でナチュラルカラーのものだけ拡大してみました。

水面に接している部分の水面に小さなえくぼのような凹みがあるのがお分かりいただけると思います。








今度は晴天の日当たりの良い場所にフライを置いてみました。太陽光が直接フライに当たっているので、上の写真よりもウイングの色がはっきり分かります。

黒はシルエットでしか見えませんが、クリームやナチュラルはかなり立体的に見えます。







上と同じ条件で、今度はパラシュートとエルクヘアカディスを浮かべてみました。
エルクヘアカディスはボディに巻いたハックルが水面にくぼみを作り、ウイングは思ったよりもはっきり見えました。
パラシュートは水平に巻いたハックルが水面にベタッと乗って安定し、ボディがきれいなシルエットで見えているのが分かります。




パラシュートを拡大してみると、ハックルが水面に乗っているのがよく分かります。
ハックルが水面に接しているということは、ボディは水面下にあるということになります。

実際の釣り場でフィッシュウインドウや水面の波などを考えると、このボディだけが沈んでいる状態は大きなヒントになりそうです。





水中のフライはどんな感じ?

実際にフライを水中に沈めて水中から撮影してみようかと思いましたが、そこまでやってしまっては楽しみが少なくなるので、作ったフライをお風呂に持ち込んだりして、ぜひご自分で試してみてください。
実際にやってみると濡れたときの色の変わり方、空気を含んだ様子、手で水流を起こしてみれば流れにもまれる様子もイメージできます。