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②ウェットフライ

Wetの言葉どおり、どっぷり深く沈み込んでしまうのではなく、主に水面から中層くらいの深さで使うフライです。
浮かせるでもなく、深く沈めるでもなくフライを操作して魚にアピールするやり方は、日本の伝統的な毛ばり釣りであるテンカラ釣りに共通する点がたくさんあります。テンカラ釣りは職漁師がヤマメやイワナを効率よく採る方法として発達してきたものなので、ウェットフライも使い方次第では最強のフライになる可能性があります。養沢のような管理釣場で使うと釣れすぎてしまうこともあるので、ここでは一般的なことを簡単に説明します。

ウェットフライはどんなフライ

水面上を流すドライフライを平面(2次元)とすると、ウェットフライは縦(深さ)の動きを加えた立体(3次元)ということができます。
ドライフライは流れ任せに流すことで流される虫を演出し、餌としての魅力を強くアピールしますが、ウェットフライは積極的にフライを操作することで動き回る水生昆虫や羽化の途中の形態、小魚など広い範囲のものを演出することができます。魚の食性以外(興味の対象、攻撃の対象)にも強く訴えかけるので、時には食い気がない魚にも効果があります。

ウェットフライを乾いた状態で流せばしばらく浮いて流れ、徐々に水に馴染んでゆっくり沈んでいきます。これは水生昆虫が羽化に失敗したり、水面に落ちて流される状態、蜘蛛や蟻などの陸生昆虫が流される様子に似ています。
沈んだウェットフライは流れを利用することで浮かせたりゆっくり移動させたりすることもできます。下のイラストのように上流側からフライを流したとき、フライラインを流れと同じスピードで流すとフライは自重でゆっくり沈み、フライラインを止めると抵抗がかかってフライは浮上します。ラインを止めたり引いたりすることで羽化途中の水生昆虫から、逃げ惑う小魚まで演出できるわけです。




ウェットフライは前後左右の動きに加え、上下(縦)の動きも出てくるので、見えない水中のフライの位置や動きを把握するにはある程度の経験が必要になります。
一方ウェットフライはルアー的な要素も含んでいるので、魚の都合で釣れてしまう確立はドライフライよりも多くあります。







釣りにならないほど風が強かった日でも、水中はこんな感じに穏やかでした。
人間がいる環境と魚がいる環境とでは別世界だということを頭に入れておくと、魚の気持ちが少しは理解できるかもしれません。
水中にあるフライは魚にどう見えるているか、この写真だけでも水面の光具合、水の色、背景となる岩の色などヒントがたくさんあります。


ウェットフライは、人に見せるだけなら出来上がった形の良さや色のきれいさで満足できますが、魚を釣りたいと思ったら水中でどうなっているか見たくなるはずです。お風呂に沈めてみるのもよし、水中眼鏡で覗いてみるのもよし・・自分で確かめることが自分のフライフィッシングを確立します。







魚の生態からのヒント

鯉が水底の泥の中の餌を食べやすい口になっているように、ヤマメやニジマスなどマス類は、水面や水中を流れてくるものを発見して食べやすいようになっているので、自分(魚)と水面の間にあるものは見つけやすく、逆に自分(魚)より下(深いところ)のものは見つけるのが苦手です。
こんな魚の生態を知ることはウェットフライを操作する上で参考になります。魚が反応しやすい状況をイラストにしてみました。




マス類は目前を移動するものに本能的に飛びつきます。この反応は犬や猫など獲物を捕らえる動物に共通しているものだと思います。近所に猫がいたら試してみてください。


フィッシュウィンドウ内と外では反応は違うようですが、かなり遠くからでもフライに飛びつくことがあるし、3ミリほどの極小フライでも水面下に沈んでいると見つけてくれます。







目前で向きを変えるものに反射的に飛びつくことがよくあります。
向きが変わることで存在に気づくのか、餌に逃げられると思うのかわかりませんが、人間に当てはめてみても自分の目前でUターンされたら気になります。












普段水底にへばりついていて限り餌にはなりにくい水生昆虫が、羽化のために水面に泳ぎあがる状態は魚にとって食べやすい状態に違いありません。
水底で脱皮して泳ぎ上がる種類、蛹のまま泳ぎ上がる種類、幼虫のまま泳ぎ上がって水面で脱皮する種類など、さまざまな種類の水生昆虫が羽化のため水面に向かって移動します。









マス類が主食にしている水生昆虫などが水面から沈んでいくという動きはほとんどないのに、釣り場の魚は目前を沈んでいくものに強烈に反応します。これは放流されている魚が養殖魚で、養殖池での食生活(ゆっくり沈んでいくペレット=粒状の人工飼料)が記憶に残っているからと言われます。


最近は沈まないペレットを使う養鱒場もあり、そういうところの魚は水面の餌に反応がいいという話です。(本当かどうかわかりませんが)



ウェットフライのサイズ

ウェットフライはドライフライより全体的にやや大き目のサイズが良く使われます。
伝統的なパターンを基にしているものが多いので小さなサイズは作りにくいこと、小さなサイズは沈みにくいこと、大きめでも魚が咥えるので小さくするメリットがあまりないことなどが主な理由と思われます。
養沢程度の小渓流で#10~#16、中~大規模の川で#6~#10、遡河性の大型魚を狙う場合など#2以上のものを使うこともあります。
ドライフライがひとつのパターンに対して何種類かのサイズを揃えるのに対して、ウェットフライはサイズだけでなく沈みやすいヘビーワイヤー(太軸)フックと沈みにくいファインワイヤー(細軸)フックも揃えることがあります。ウェットフライではどの層にフライを漂わせるかがフライサイズよりも重要な場合がたくさんあるからです。

ウェットフライの種類

ウェットフライは伝統的なものが多く、歴史を積み重ねた美しいパターンは見ているだけでも楽しくなりなす。
市販されているパターンブックに掲載されているパターンそっくりに作ろうと思うと、マテリアル(材料)は多様、技術も必要なので少し敷居が高いかもしれません。実践で使うだけならハックルウェットだけで十分なので、時間とお金と相談しながら楽しんでください。

シルバーマーチブラウン             ウイング付きのフライは水の抵抗を受けて浮き上がりやすく、#14以下のサイズではフライは沈みにくくなります。

パートリッジ&オレンジ            ウイングを省略したハックルウェットと呼ばれ養沢で最も使いやすいパターンのひとつです。ボディの色でネーミングが変わります。オレンジは濡らすと透けて水生昆虫っぽい色になります。

グラウスハックル               ウェットフライでは使用されるマテリアル(材料)や色によってネーミングされることが多くあります。グラウスという鳥の羽をハックルに用いたのでこの名が付きました。

ブループロフェッサー              プロフェッサーというパターンのブルー版です。ドライフライやニンフフライではほとんど使われないブルーが普通に使われるのもウェットフライの面白いところです。

ピーターロス                 特定のものに似てるというわけではありませんが、養沢で良く釣れるパターンのひとつです。小さなルアーと思えば理解できるような気もします。

ビーバーキルメイル               アメリカ東部にあるビーバーキルの名を冠した著名パターンです。メイルは雄のメイフライを表し、ボディハックルはフライを表層に留める効果があります。イメージは溺れたカゲロウ(メイフライ)でしょうか。

グリズリーキング               赤いテール、グリーンのボディはかなり派手な印象ですが、水に入れると違った雰囲気になります。ビアードハックルにグリズリー(白黒模様)のコックハックル(雄鶏の首羽)を使っています。

ドクターブレック               湖や大きな河で効果的な赤白の派手なパターンは、魚の食性・・というよりも好奇心や攻撃の対象になるのかもしれません。 このようにウェットフライには理由が分からないことがたくさんあります。

ダンケルド                  大型のトビケラのイメージというパターンです。夕方の大物キラーという噂ですが養沢では少し大げさかもしれません。